「呼吸を意識して」と言われたときに何を意識すればよいのか?
- KAZUHIRO HFT
- 21 分前
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よく「呼吸を意識して」と言われるけれど、具体的に何をどう意識すればいいのか、ちゃんと考えたことはありますか?
呼吸は、私たちが生きていくためのエネルギーを作り出し、体を正常に機能させるために不可欠なことは誰もが知っていることです。しかし、普段私達が無意識の中で行っている「呼吸」の具体的なやり方を教えてもらったことのある人は少ないのではないでしょうか。
例えば、ジムなどに行き、人に運動を教えてもらう時「鼻から息を吸って、口から吐きましょう」といった指示をよく聞きますよね。
実はこれ、単なるお決まりのフレーズではありません。
私たちの体の仕組みに深く根ざした、とても重要なテクニックの1つなのです。
今回は、なぜこの呼吸法が推奨されるのか、その理由と、意識すべき具体的なポイントを基本に立ち返って深く理解し、呼吸を変え、より高いパフォーマンスが発揮できる体になる為のヒントを探っていきましょう。
なぜ「鼻から吸う」ことが体にとって重要なのか?
普段、私たちは意識せずとも鼻で呼吸をしています。鼻呼吸には、体を守り、機能を高めるための大切な理由があります。
◆ 体に備わる高性能フィルターとエアコン機能
鼻には、空気中のホコリや細菌、ウイルスといった異物をキャッチする「フィルター」の役割(鼻毛や粘膜)と、吸い込んだ空気を体に適した温度・湿度に調整する「加温・加湿」機能があります。例えば、冷たい空気を吸っても体内に取り込まれる時は適温になります。口呼吸ではこれらがダイレクトに体内に入り込み、不調の原因になることがあります。
◆ パフォーマンスを高める「魔法のガス」を取り込む
特に注目すべきなのが、鼻呼吸による「一酸化窒素(NO)」の取り込みです。この物質は、鼻の奥(副鼻腔)で常に作られており、驚くべき働きを持っています。
一酸化窒素はどのように作られるのか? 一酸化窒素は、私たちの体内でL-アルギニンというアミノ酸を材料にして、一酸化窒素合成酵素(NOS)という酵素の働きによって、鼻の奥(副鼻腔)で自然に作り出されています。
一酸化窒素にはどんな効果があるの?
血管を広げ血流をアップ 肺の血管を広げ、酸素が体中に効率よく運ばれるのを助けます。持久力向上や疲労回復促進が期待できます。
体を守る力 抗菌・抗ウイルス作用があり、病原体から体を守ります。
呼吸器系の健康維持 気道の繊毛運動を活発にし、異物排出を助けます。
鼻から息を吸うことは、体を守りつつ、運動や日常動作に必要な酸素を効率よく届け、パフォーマンスを高める合理的な方法の1つなのです。

鼻呼吸をスムーズにする秘訣
鼻呼吸をスムーズに行うポイントは「舌の位置」です。
皆さんは普段、舌が口の中のどこにあるか意識したことはありますか?
一般的に最適とされているのは、舌の先が上の前歯のすぐ後ろの歯茎に軽く触れ、舌全体が上あごに吸盤のようにピタッとくっついている状態です。これが「舌の定位置」であり、鼻呼吸をするときの基本の舌の位置になります。
ではなぜこの位置が良いのでしょうか?
1つは気道が広がり、喉の奥のスペースが確保され、鼻から取り込まれた空気の通り道がスムーズになります。次に、口呼吸を防ぐ、自然と口が閉じやすくなり、無意識の口呼吸を防ぎます。
逆に、舌がだらんと下あご側に落ちているとどうなるでしょうか?
無意識に口が開きやすくなり、口呼吸を招くだけでなく、頭部が前に出るような姿勢の崩れ(ストレートネックや猫背)、顎周りの筋肉の無用な緊張にも繋がりやすいとも考えられています。舌の位置はスムーズな鼻呼吸を促すためだけではなく、全身のバランス、良い姿勢を保つためにも意識することが非常に大切なのです。
なぜ「口から吐く」のか?
運動中は、エネルギー生成と同時に、老廃物である二酸化炭素(CO₂)がたくさん作られます。この二酸化炭素は、体に溜め込まず、速やかに外に出す必要があります。
なぜ、二酸化炭素を速やかに出す必要があるのか?それは、二酸化炭素が体内に溜まりすぎると、血液が酸性に傾いてしまうからです。血液が酸性化すると、私たちは疲労を感じやすくなったり、筋肉が本来の力を発揮しにくくなったりします。 また、古い空気(二酸化炭素)をしっかり排出すれば、それだけ新鮮な酸素を効率よく取り込むためのスペースが肺に確保できます。だからこそ、運動で多くの二酸化炭素が発生する際には、口から素早く、しっかりと息を吐き出すことが有効的であり、鼻から吐くよりも多くの空気を一気に吐くことができるのです。
では、口から息を吐くとき、舌はどこにあるのか?鼻から吸うときや普段の安静時には舌を上あごにつけておくのが基本だとお話しましたが、口から「フーッ」と息を吐き出す際には、空気の通り道を開けるために、舌は意識するまでもなく自然と上あごから離れ、リラックスして口の中のやや下の方にある状態になります。舌先が下の歯の裏側あたりに軽く触れるか、どこにも触れずに浮いているような感覚かもしれません。無理に特定の位置に置こうと意識する必要はありません。
適切な呼吸は、「舌の位置まで意識した呼吸」にあり
適切な呼吸をすることは運動パフォーマンスを向上させるだけではなく、日常生活を楽に過ごすことにも繋がります。今一度、「呼吸」というあたりまえの動作の基本に立ち返り、この記事で伝えた具体的なポイントを意識してみてください。
❶ 吸うときは鼻から
舌は上あごの定位置に!人間に備わる体の仕組みを利用したスムーズな鼻呼吸が可能になります。
❷ 吐くときは口から 運動時、体内の二酸化炭素を素早く効率的に排出し、疲労を軽減、次の酸素摂取に備えます。
「呼吸を意識して」という言葉の裏には、こうした体の仕組みに基づいた深い意味があります。その意味を理解し、吸うときの舌の位置を意識して呼吸をコントロールする、その意識が、あなたの体を大きく変えることに繋がります。
ちなみに「呼吸」という動作は、胸郭の動きやインナーユニットとの連動といった要素とも関連性があり、とても奥の深いものです。例えば、深い呼吸をする際のポイントは今日お伝えした内容とはまた別にあります。
私達が日頃無意識に行っている動きに、こんなにも興味深い秘密が隠されていることを知ると、改めて人体の凄さに驚くばかりですね。
補足 呼吸法は個人の状態や状況(安静時、運動の種類・強度など)によって最適な方法が異なります。この記事は特に運動時などを想定した解説として有用ですが、全ての場合に当てはまる唯一の方法というわけではありません。
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